社員がドキッとした……カップラーメンの生みの親「日清食品」安藤百福の呼びかけ
【連載】「あの名言の裏側」 第7回 安藤百福編(4/4)最大のコストは時間である
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野中の1本杉では全体の需要が伸びない。むしろ多くのメーカーが参加して森をなしたほうが、お互い切磋琢磨するから市場が拡大するし、よい商品が生まれる。
(『無から有を生む発想巨人 安藤百福語録』より)
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とはいうものの、そうした商標や特許に関する係争は、1971年に日清食品が発売した「カップヌードル」にも付いて回ります。日清食品は権利侵害の疑いがある商品に対して、その都度、不正競争防止法違反で訴え、製造販売中止を求める仮処分を申請。しかしこちらも、最終的には日清食品の製法特許や実用新案として登録された後に公開され、カップめん市場は袋めんを越える活況を呈するまでに成長していくのです。
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私は、工業化できない特許には価値がないと考えている。また、異議申し立ての多いほど、その特許には実力があると思っている。そして異議を退けて成立した特許は、常に強力である。
(安藤百福『魔法のラーメン発明物語 私の履歴書』より)
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安藤百福編の第1回で、安藤氏は“実学の人”と評されることがあると書きましたが、上記の発言からも、そうした安藤氏のポリシーが滲み出ているように感じます。
安藤氏は、社内を回ったりする際に、社員によく声をかけていたといいます。そんなとき、安藤氏は次のように話しかけたそうです。
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君は今、何をしているの?
(安藤百福発明記念館編『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』より)
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ちょっとドキッとするような呼びかけです。安藤氏は人一倍好奇心の強い人だったので、単純に「いま、目の前でやっている、その業務は一体どのような内容なの?」「どういう研究・調査なの?」と質問していただけ、と取ることもできます。
一方で安藤氏は、極めて合理的に物事を捉える人でもありました。「君は今、何をしているの?」という問いには、「真剣に物事に取り組んでいるか」「無為に時間を費やしていないか」「理に適った考え方ができているか」といった、生き方、考え方の本質をつく呼びかけとしても響いてくるのではないでしょうか。
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最大のコストは時間である。
時計の針は時間を刻んでいるのではない。自分の命を刻んでいるのだ。
神はすべての人に一日二十四時間を与えられた。時間だけは金持ちにも貧乏人にも平等であるが、取り返しがつかない。
(安藤百福発明記念館編『転んでもただでは起きるな! 定本・安藤百福』より)
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君は今、何をしているの? ──この言葉は、もしかすると安藤氏が自分自身に常に問いかけていたものなのかもしれません。
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